久々読書

中沢けいさんの「楽隊のうさぎ」を勧められたのは、もう1年半ぐらい前だと思う。

ヘタすると2年半かもしれない。とにかく、アンサンブルの地区大会か何か、吹奏楽関係での大会、でも夏のコンクールじゃないとき、しかも陸前高田でだったと思う。

勧めてきたのは、元同じバンドのベーシスト氏。

彼は元プロでベースがとってもうまい。とってもうまいって陳腐な表現だけど、とってもうまいっつったらもう私のトロンボーンなんか「一緒に吹かせていただく」というレベルなのだ。

彼は、中学の吹奏楽の指導をしている。

で、感想。久々に文庫本を読んだ。

内容は、リンクをクリックすれば出てくる、気弱な少年が、中学校に入学して吹奏楽部に入部、二年生の秋に全国大会の舞台に上るまでの話だ。

因みに、内容をばらすと、1年のときは支部落ちしている、全国常連校という設定だ。

別に何部でも、この手の話しは書けると思うが、こと中学の吹奏楽というのは、多分他の部活とも違うし、高校の吹奏楽とも違うように感じた。

中学生が3年になって控える高校受験は、高校3年が控える大学受験よりもはるかにハードルが低くて、そんなに必死に勉強しなくても大概の学校には受かるからだ。

現に私は、中3の時受験勉強らしい勉強をまったくしなかった。大学受験はそうはいきそうにない。

私が普段行ってる高校は、やっぱり高校生なだけあって少しオトナだ。

この小説に出てくるような悩みはあんまり抱かないだろう。

私も中学では吹奏楽部にはいなかったので、中学ぐらいの精神状態で楽器をやったらこーだったか、とも思った。

別に、この小説は「吹奏楽部紹介小説」ではなさそうだ。でも十分紹介しきっているとも思う。全国大会常連校の都合よさで地区大会はシードだったり、県大会ぐらい軽くすっとばしたり。人数制限、楽器の特性、そういった細かいところまでよく取材されてかかれていると思う。

その上、中学生ぐらいの心情をうまくからめ、大人になりかけの子供という不安定な年頃の行動を三人称でうまいこと書いている。

つい、私などが書く物語は、事細かに状況描写をしてしまいがちだけれど、適度に省略された場面転換などは、参考になった(するなよ)。

高校生になるともう大人に近いので(でも子供なんだけど)、こういう中途半端なモヤモヤはないんだけど、何か、こう、この主人公が感じる孤独感とか、それこそ50人も仲間がいて一緒にやってるのに一人でいるような微妙な気持ちが伝わってきた。

私は因みに、役員とかやってる暑苦しいおせっかいの学年副会長だったので、主人公君よりも部長の女の子の様子が自分を見ているようで面白かった。手帳を持って、アツくなると自分の主張が曲げられなくなるのは今も変わらないかもしれない。

吹奏楽部ってフシギだ。

音楽を奏でるのにはまさに男女の差はない。ないというより求められない。あんまり「ココのフレーズは女(男でもいいけど)のように吹け」とは指示されないだろう。つうかどんなだそりゃ。

でも、運動部はまず男女に分けられ(体格が違うから仕方ないけど)、私がいた体操なんかは種目がまったく違う。床ぐらいしか同じのはない。しかも男子の床には音楽が付かない。ていうか、女子のには音楽がつく、なのか?

同じチームで1つのものを作り上げるということを、男女混ざってやるっていう部活がまあないだろう。

それに伴う弊害がゴヤゴヤとあったりして、いまになって痛感するのは、中高生の物事を完成させる力ってのは、最後は精神力なんだなあと思う。

小説の中であった、卒業生の台詞で、「この後、すばらしい演奏や深い演奏ってのはすることがあるかもしれないけど、真剣な演奏ってのはこれが最後かもしれない」というのがどっかで誰かが言ってたような気がした。

そして、1つの目標に向かっていく時には、成長という枝に、栄養を作る葉っぱがあり、その小さな枝をへし折るストレスがあり、空気を換える風が吹き、1年たって年輪が1つ増えるというサイクルで立派な木になるみたいなことになってるのかと思った。

その、土壌に、中学では私は吹奏楽を選ばなかったわけだが、選んだカッチン少年はこれからどんな青年になるのか、ちゃんと茶髪のにーチャンにブラシは返せたのか、ちょっと気になるところで物語りは終わっちゃったのだった。

何だか、甘酸っぱい、子供の時に好きだったレモン味のラムネ菓子(名前忘れた・レモンの形してるの、1cmぐらいの)の味を思い出すような話しだったなあ。

もし、甘酸っぱいキモチになりたいなら、とってもオススメ。

中高生はリアルで「あーーー」と思うかも知れない。

でも、結構イイ話。ハートフルです。

どうでもいいけど、「林家正蔵所得隠し」って、早口言葉みてえだ(笑)